4月5日(土)、懇意にしているイザールアウエン自然幼稚園の2歳児クラスの担任だった先生が、今までの経験を生かして人々に自然幼稚園の良さをお伝えしたいということで、「自然教育学とはなんぞや」というセミナーを開催されました。
私は、森の幼稚園に行くときのいつもの格好をして、リュックサックとお弁当と飲み物を持参して、意気揚々と出かけました。
10時過ぎに、集合場所のイザールアウエン自然幼稚園に到着。この日のメンバーはすべて先生の知り合いで、合計6名。参加者の内訳ですが、イザールアウエン自然幼稚園の実習生2名、幼稚園の先生1名、教育学とはまったく無縁の女性1名、そして私。
3月にイザールアウエン自然幼稚園に行ったときに、先生が「ナメクジ退治のために、高い囲いをしなければならないんだよ」と言って、木の板で囲ってあったものが、プラスチックの囲いに変わってました。
小川を渡って、丸太が円状に置かれているところで、朝の会が始まりました。
先生がまず、「自然教育」の定義を述べられました。
● 自分で見つけた、自分のリズムに従って動ける
● 大きな空間で動ける
この2つにより、エネルギーを発散させることができるので、子供は大満足する
● 自由な空間なので、自分で決めることを自然に学べる(Selbstbestimmung)
● 直接的に生きることができる
● ハウス型の幼稚園だと、閉ざされた空間なので、子供ひとりひとりが距離を置いて遊ばないといけないけど、自然幼稚園であれば、グループを組んで、自分はグループの一員であることを感じることができる。それが、社会的能力、つまり、コミュニケーション能力を発達させる
● 自然幼稚園では、自然との一体感が味わえるので、自然に対して尊敬の気持ちを持つことができる
それぞれが自己紹介をして、ワークショップにどんな期待を持っているのかをコメントしていきます。
私はあらかじめ用意していた以下の2つの質問もしてみました。
⑴ 子供が自立するための発達段階として、「自発性・自主性(Selbständigkeit)」、「自律性・自決性(Selbstbestimmung)」がありますが、自然教育学では、どちらを子供に要求しているのでしょうか?
⑵ 子供の成長で大切な4つのエレメントとして、「直接的なもの」、「自由」、「抵抗力」、「一体感」というものがありますが、3つめの「抵抗力」がいまいちよくわかりません。厳密にはどういう意味になりますか?
先生は、「今日のセミナーの中で、答えを導きましょう」と言ってくださったので、信頼できるスタートとなりました。
自己紹介をする前に、手を使って遊びました。相手の目を見ながら、両手をパンと叩きます、そのパンをどんどん続けていくというもの。最初は隣り同士なのですが、自由に相手を選んだり、相手にまた返したり、スピードを早くしたりして、反射神経を使うゲームでした。
ウォーミングアップをした後、二人一組になり、目隠しをして、森の中を少し歩きました。目隠しをしていない人が、目隠しをしている人の手を持って、誘導するゲームです。
目隠しをしていない人は、目隠しをしている人に、「まっすぐに進みます」とか「右に曲がります」などを言ったり、「今、根っこの上を歩いています」や「木の葉っぱを触ってみましょう」などと言って、葉っぱや幹や枝を触ったりします。
目隠しされているので、何も見えません。耳が敏感になり、鳥のさえずりがよく聞こえます。また、手から伝わるものにも敏感になっています。 本当に五感をフル回転させて知覚している状態です。
私はこのゲームにより、「直接的なもの」と「自由」と「永続的なもの」と「一体感」を見事に感じることができました。そして、森の幼稚園の子供たちは、きっとこんな体験を毎日しているんだろうなあ〜って想像できました。
大人は目に見えるものが邪魔して、なかなか知覚ができません。だからこそ、目隠しをして、誘導してもらうことにより、知覚が目覚めるのではないかと思いました。「大人の知覚発達ゲーム」と言えると思います。本当に素晴らしいです。
その後、集合して、木の葉っぱ探しゲームをしました。先生が木の葉っぱの写真を何枚か持ってきていて、私たちは写真を一枚選び、葉っぱと幹の形を片取るための薄い紙とクレヨンを持参して、葉っぱを見つけにいきます。
私は「イチョウ」を選びました。まだ春なので、若い木しかありませんでしたが、すぐに見つけることができました。とっても嬉しかったです。
また集合して、葉っぱや樹皮の違いを勉強しました(Eiche(ナラ)、 Birke(シラカバ)、Buche(ブナ)、 Ahorn(イチョウ)、 ...)。
紙を2枚クリップでくっつけると、オブジェにもなります。
次に先生は、「自分のお気に入りの場所を見つけて、その場所で5分間ほど目を閉じて瞑想してみてください。どんなことを体感したのか、書き記してみてください」と言われたので、私は小川の側の草むらに腰掛けて瞑想してみました。
朝の会の後に行った目隠しゲームのように、「自由と境界」、そして、「自然との一体感」を感じました。
また、集合して、今度は食べられる植物について学びました。
● ラムソン(Bärlauch) → ニンニクの香り。葉は生のままサラダで、あるいは茹でたりペーストにしたりして食用に供される。
● イラクサ(Brennessel) → 葉と茎に刺毛がある。ヨーロッパのセイヨウイラクサは料理・薬用ハーブやコンパニオンプランツとして用いられている。
● ブラックベリー(Brombeere) → ジャムやお茶に用いられる。
● ヒナギク(Gänseblümchen)
● タンポポ(Löwenzahn) → 万能薬。
● シラカバの葉、シラカバの樹皮(Birkenblatt, Birkenrinde) → 唯一食べられる木の葉っぱ。
実際にシラカバの樹皮を食してみたところ、紙を食べてるような食感でした。そして、油分がたくさん含まれているので、焚き火をするときに用いられるとのこと。
いよいよ昼食です。各自、昼食は持参していたのですが、先生がStockbrot(木の枝にまきつけて焼くパン)、手作りのサワークリーム、じゃがいもを用意してくださっていたので、それを食べることにしました。
まずは焚き火の準備をします。
焚き火の炎がどんどん大きくなっていきます。
パン生地を木の枝に巻き付けて、Stockbrotを作りました。とっても美味しかったです。
生クリームをジャムが入っていたガラスの瓶の中に入れて、ラムソンとヒナギクも入れてよく振って、バターを初めて作りました。これも次の日にパンに塗って食べたところ、とっても美味しかったです♫
昼食後、先生の作品をお手本にして、自分たちの作品を作りました。木工作業です。私はモビールを作りました。木の枝の皮をナイフで削り、ドリルで穴を開け、ビーズもつけてプラスチックの糸を通します。2時間以上、時間がかかりました。でも、集中して何かをするのはとっても良くて、これも瞑想になりました。
最後は、ロープの縛り方を学びました。木に巻き付けて、ブランコもロープで作ったりしました。
終わりの会は、ティッピの中で行って、参加者ひとりひとりが感想を述べました。
私は「本当に多くのことを学べて、とっても楽しくて、ためになって、満足の一日でした!」と先生に伝えました。
さて、先生から頂いた私の質問への回答ですが、、、
⑴ 子供が自立するための発達段階として、「自発性・自主性(Selbständigkeit)」、「自律性・自決性(Selbstbestimmung)」がありますが、自然教育学では、どちらを子供に要求しているのでしょうか?
「Selbstbestimmung」という言葉にこだわってはいけません。自然幼稚園では、自分で決めることが第一歩で、大人である先生がその子どもの決定に寄り添いながら導きます。
私は先生からのその言葉を聞いたとき、「なるほどなあ〜」って思いました。子どもに自分で決めさせて、そのまま放置しておくことが一番問題であるわけなのです。
Michael Winterhoff氏の「SOS Kinderseele」を読んでから、「Selbstbestimmung」という言葉に拒否反応があったのですが、言葉をそのまま受け止めるのではなくて、言葉と言葉の行間を読み込まなければならないということなんだと思いました。
⑵ 子供の成長で大切な4つのエレメントとして、「直接的なもの」、「自由」、「抵抗力」、「一体感」というものがありますが、3つめの「抵抗力」がいまいちよくわかりません。厳密にはどういう意味になりますか?
これは、どうも「抵抗力」という言葉が誤解を招く表現だったようで、先生は、どちらかというと、「永続的なもの」という表現が正しいと教えてくれました。
自然は確かに永続的なものであり、同時に人間は自然に立ち打ちできないので、抵抗できないという意味もあります。
これもまた、言葉をそのまま受け止めていて、行間を読み切れていなかったなあ〜と思いました。
やはり、本を読んで理論だけを勉強していてはだめだということなんだと思います。今回のセミナーで、実践が学べたので、本当によかったです。
勉強をしていく上で、理論だけではだめだし、実践だけではだめだということなんでしょう。
そう思うと、森の幼稚園の世界を実践と理論とで学べる機会が持てて、とても幸せです。