今日から来週の水曜日まで初めて立て続けに二組の視察のお客様をサポートします!
まずは本日は一組目の方。50代の女性お二人です。「自然との共育」をテーマに活動されているボランティア団体のスタッフのお二人で、11月半ばになんと森のようちえんをオープンされました!とっても素晴らしいと思います。
彼女たちの「ドイツの森の幼稚園を視察して勉強したい!シュタイナーとモンテッソーリも見学したい!」っというご希望を叶えるために、私は3日間の視察プランをアレンジさせて頂きました。
中央駅にあるホテルにお迎えに上がり、地下鉄とバスに乗って、目的地のラマースドルフのモンテッソーリ幼稚園に到着!
まずは自分たちの荷物を3階にある休憩室に置いて、地下室にある運動ルーム、サウナを改造した隠れ家、作業室を見学。
お客様は作業室に子供向けの道具が立派に揃っているのを見て感激されていました。
「さすが、ドイツは職人さんの国ですね〜!!!」
1階の保育ルームに移動して、季節のテーブルをパチリ。
お客様はモンテッソーリコーナーにあった、クレヨンの収納スペースにとても興味を示されました。縦向きに色ごとにクレヨンがコップの中に入っているので、使い勝手が良くて、先生もどの色のクレヨンが減ってるのか一目瞭然。
なるほど、そんな視点もあったのかと、私にとっても新鮮な発見でした。
私は現在、手芸が趣味の一つでもあり、パッチワークで大型の壁掛けを作りたいなあ〜なんて模索していたので、リラックスコーナーの壁掛けに注目。
キッチンに行くと、布ナプキンに破線が描かれていて、その線に沿って折り畳む動作を学ぶというもの。
小さいものをつぐ動作を学ぶセットもいくつかありました。生活に密着したモンテッソーリ教育ならではですね〜。
2階の保育ルームに移動。木の棒に毛糸が何本も巻き付けられていました。これもモンテッソーリ教具の一つですね〜。
作業コーナーには、スモッグがかかっていました。
何か作業するときにテーブルの上に敷くプラスチックのマットもありました。
お客様がおっしゃっていたことが印象的でした。
「この幼稚園では、作業に必要なものがすべてそのコーナーに揃っているので、やりたいと思ったときにすぐに行動に移せますね〜」
子供たちがまだ作業を中断していないことを示す「ネームプレートルール」にも、お客様はとても感心されていました。
つまり、作業を中断していないことを子供たちは自由意志で決定し、ネームプレートを置くことにより、その作業をキープしていることを示すのです。
幼稚園でみんながわかっている社会的なルールだからこそ成り立つんだと思います。
廊下には、子供たちが何時に降園するのかと欠席の子供がわかるように、子供たちを示す絵のカードが貼られていました。これもアイデアの一つだなあ〜と感心しました。
地上階や2階にある上履きを履き替えたり、コートをひっかけたりする場所は手作りです。なんと園児のお父さんに木工大工ができる職人さんがいて、作ってくださったとか。
そして、この上履きを履き替える場所は、園長先生のアイデアなのです。園児一人ひとりが座れるように工夫され、座るための低いイスの中に靴を入れるスペースがあります。なんと美しいデザインでしょうか。
園長先生はずっとカタログで探していて、欲しいものがないので、その職人のパパがいることにより、自分たちで作ることを考えられたそうです。
「ないものは自分たちで作る!!」 もしかしたら、これもドイツ人気質かもしれない、、、、って密かに思ってしまいました。
子供たちが数名、外遊びをしていたので、園庭に出てみました。 砂場に、砂を掘る作業ができる道具がありました。
再び、園舎に入って、お客様が一人ずつ、子供たちの昼食風景を見学。廊下に、子供たちお手製の愛らしいテントウムシがありました。子供たちを癒すテントウムシたちです。
コックさんお手製のランチが休憩室にセッティングされていました。ニュールンベルクの焼きソーセージとジャガイモとニンジンのグラタンです。美味しかったです!
ランチの後、12時半くらいに、園長先生が来てくださって、恒例の質疑応答の時間。
お客様 「本当に素晴らしい環境で園児が保育を受けていると思います。「キープ中」という意味のネームプレートを置くルールや、子供たちが静かに作業をしていたり、先生が静かに子供たちを見守る姿に感動しました。また、天井からぶらさっている布など、暖かい色が心地よさを醸し出していると思います」
園長先生 「園児のお爺さんが壁塗りができる職人なので、その方が園舎の中の壁も暖かい色に塗ってくださったのですよ」
お客様 「日本に文科省の幼稚園教育要領というものがあり、年齢に応じた発達目標というものがあるのですが、そのような教育指針に基づいて保育されていますか?」
園長先生 「バイエルン州にも幼稚園教育要領が存在します。しかし、それは知識として先生の頭の中にあり、例えば、モンテッソーリ教育で重きを置いている手仕事がよくできない子供がいると、なぜなのかとディスカッションすることはありますが、その教育指針を念頭におく保育は行っておりません。また、モンテッソーリ教育に基づく保育をすることにより、幼稚園教育要領に掲げられている目標は達成できます」
園長先生のお話をまとめると以下のとおりです。
● 私が園児にこんな大人になって欲しいと思い描いている姿は、自分が好きで、だからこそ相手も好きになることができて、尊敬しあえる関係が築けること。生活や仕事や趣味等の人生に、自分の価値が見いだせること。
● 私はこの園の保育を通じて、バランス良い人間になることを願っています。好奇心が強すぎても弱すぎてもいけません。ほどほどのバランスを保たないといけません。
● 子供たちが自分のテンポで学べる環境づくりこそ、このモンテッソーリ幼稚園の教育指針の一つです。
● 週に一回、月曜日に2時間、職員の全体会議をしています。週に一回、水曜日に2時間、職員のグループ会議を行っています。この会議では、子供たちの様子を担当の先生が報告してディスカッションします。
● 月曜日は、子供会議が行われ、その週に何をするのかを先生と園児とでディスカッションします。時間は30分ほど。その週のイベントの話だけではなくて、子供たちが自分の気持ちを言い合う場でもあります。
● 子供会議において、「しゃべる石」というルールがあります。これは、引っ込み思案の子供でも、発言ができるように、発言権を示す石を用います。別に石でなくて、他の物体でも構いません。特に聴覚障害を持つ子供はゆっくりとしゃべらないといけないので、この石は強い手助けになります。しゃべる石を持つ子供がいると、他の子供は静かにならなければなりません。これもこの園の社会的ルールの一つです。
● 作業セラピーとして、「調理セラピーセット」や「工作セラピーセット」があります。調理セラピーセットには、例えば、ピザやパンを焼くために、必要なレシピが順を追って、一枚いちまいの絵に描かれています。セラピーを受けている子供は、そのレシピを見ながら、ゆっくりと自分のテンポで作業をします。
園長先生は続けます。「子供たちは自分の価値を知ることにより、自分を好きになり、他者を好きになることができるのです。そのままの自分で良いという心地よさを感じることが満足感につながります。そして、他者との尊敬し合える関係を築くための礎になります」
毎回、園長先生のお話から、私は新鮮な刺激を受けるのですが、今回のお話からは、「テンポ」と「バランス」が大切ということを学びました。
人には人それぞれの学ぶテンポがあるわけで、自分が良いというテンポを見つけて、そして、自分と向き合うための心地よいバランスも見つける。これが、大人も子供も関係なく、人間にとって幸せを感じるための条件なのかなあ、、、、って思ってしまいました。
園長先生とのお話の後は、セラピールームを見せてもらい、その後は、再び、2つのグループの保育を見学させてもらいました。(セラピーの時間は通常1時間ほど)
なんと、今回初めて、子供たちが自主的にモンテッソーリ教具で遊ぶ姿を見ることができました!6歳の年長さんで、アルファベットをカルタのように探してつなげる作業をしていました。
ゲームの名前は「アルファベト」。初めて見た教具です。
見守り保育でも、モンテッソーリ教具で遊ぶ子供が見れたことが、とっても嬉しかったです!
15時の降園10分前の14時50分に、終わりの会がありました。上履きを履き替える場所で、子供たちは帰り仕度をして、先生のお話に耳を傾けます。
今日のお話は、ロバのクララの友達のネズミちゃんが高熱を出して、先生が獣医さんに電話して、ネズミちゃんを治してもらうというお話。
先生が声色を変えて、ロバとネズミちゃんを演じます。ミニ人形劇です。
帰るときに、園長先生が私を褒めてくださいました。「あなたがいつも私の話を感激しながら、日本の視察のお客様に通訳されているのを見るたびに本当に嬉しくて素晴らしいと思っているのですよ」
本当にありがたいことです、、、。
私はお客様のおかげで、大好きな園長先生に再会して、お話できて、園の見学もできて、本当に楽しい一日になりました!
<補足説明です>
お客様が園長先生に、「一斉保育はされますか?」と尋ねた際に、こんな回答がありました。
「夏祭り、ニコラウス、聖マーティン祭りの前には、踊り、あるいは歌を練習したりします。それ以外には、月曜日に子供会議をやっています。水曜日には森の日があり、木曜日には農場に行きます。そのため、それ以外の曜日には、なるべく一斉保育をしないようにしています。なぜなら、少ないことは良いことだからです。(ドイツ語では、Weniger ist besser.)」
そして、モンテッソーリ教育の理論を話されていたときに、「道は目的(ドイツ語では、Der Weg ist das Ziel.)」というイディオムが飛び出しました。
少ないことは良いこと。道は目的。 なんか、モンテッソーリ教育の秩序ある保育環境や、子供ひとりひとりのテンポに合わせた保育を表現した適切なキーワードだなあ、、って感動しました!