視察4日目はシュタイナー幼稚園。ここの視察は1年ぶりに行くのですが、実は7月に前園長先生が退職されることを聞いてお別れ会のため幼稚園を訪れたとき、新しい園長先生にご挨拶したばかりなのです。
その際に、「また日本から視察の問い合わせがあったとき、受け入れてもらえますか?」と尋ねたところ、「はい、大丈夫ですよ!」と言ってもらえたので安心していたのですが、前園長先生に「視察は1名だけ」と言われた記憶が蘇り、今回2名のお客様はどうなのだろうかと内心ヒヤヒヤしていたました。
9月に問い合わせたときに、そのことには何も言われなかったので、見事クリアしたのだなあ〜って、ほっとした視察のアレンジでした。
お客様から朝ゆっくりしたいので、少し遅い時間にしてくださいと言われたため、8時40分ごろに園に到着。
前もって駅から8時40分ごろに到着することを電話で伝えていたので、園長先生が待ってくださいました。本当にありがたいです!
前園長先生は1歳〜3歳のクラスの担当でしたので、私は今まで主に3歳までのクラスを中心に視察させて頂いていたのですが、新しい園長先生は3歳〜7歳のクラスの担任らしく、今回は私にとっても新鮮な見学になりました!
このシュタイナー幼稚園には全部で4つクラスがあります。
①Sterntaler (1歳〜3歳 12名)
②Schneeweißchen (3歳〜5歳 12名)
③Rosenrot (3歳〜5歳 12名)
④Fingerhütchen (3歳〜7歳 25名)
自由遊びやキッチンでお手伝いをする子供たちの様子を見学しました。
先生は言います。「子供たちはお手伝いが大好きです。そして、お手伝い(=仕事)から生活で必要なたくさんのことを学ぶのです」
子供たちは小グループを作って、思い思いに自由遊びをしています。二人の先生は、机の上で聖マーティン祭りで使う提灯づくりをされています。子供たちが書いた絵を外側に巻いて、ロウソクを灯すようです。ステキです!
小さめのタライの中にサクランボの種がたくさん詰まっていて、その中で遊ぶ二人の子供がいました。
先生が言います。「このタライは大きすぎてはいけません。大きすぎると、子供たちは種を外に放り出してしまうからです。小さい中でたくさん詰まっていて、その中に身体をすっぽり納めることによって感じる心地よさ。つまり体感から意識(感覚)を研ぎすましていく作業をするのです。これはシュタイナー教育における、意識への働きかけになります」
私も自分の手をこのタライの中に突っ込んでみました。サクランボの種が私の手全体を押して、なんともいえない心地よさです。これはすごい!!って思いました。
季節のテーブルには、大天使聖ミカエルが飾られています。
朝食は、バターを塗った穀物パンとお茶。更にパンにはジャムをつけたり、ハーブ入り塩こしょうをかけたりします。
9時半に、後片付けをみんなでします。先生は「後片付けの歌」を歌います。
そして、子供たちは円になります。いわゆる、「ライゲン」。シュタイナー教育の原点です。円の中心が大切という勉強です。
歌を歌って、リトミックをして、朝の会が行われました。「鳥のさえずり」、「太陽の光」や「風」や「水」というキーワードが聞こえてきます。「自然の恵みに感謝しましょう」という意味になります。
自由遊びのとき、子供たちが動物の人形を並べたので、園長先生が「動物を使ったお話」をしました。内容は、、、
「小さいネコが屋根の上にいます。小さいので自分で屋根から飛び降りることができません。困っているとロバがやってきます。ロバが小さいネコに自分の背中に飛び乗れと言うのですが、小さいネコは怖くて飛び降りることができません。ニワトリがやってきます。ロバがニワトリに、自分の背中に乗れと言います。ニワトリがその通りにすると、ロバが小さいネコにニワトリの背中に飛び乗れと言います。そして、小さいネコはニワトリの背中に飛び乗り、次にロバの背中に飛び乗り、最後は地面に着地できました。めでたし、めでたし」
3人の子供が、小さいネコとロバとニワトリを操ります。まるで、おとぎの世界のお話を聞いているかのような園長先生の優しい声。このストーリー、なんと先生の即興劇らしいです。素晴らしいです!
そして、歌を歌って手をつないで、トイレにある洗面で手を洗います。手を洗った後、先生が歌を歌って、ラベンダーオイルを手に塗ります。
ラベンダーの香りがとても心地良いです。
3人の子供(男の子二人と女の子一人)が、王冠をかぶったり、花がついたベールをかぶったり、騎士の格好をしたりしました。また、みんなで輪になって、「国王の娘」というタイトルの歌劇が始まりました。内容は、、、
「悪いドラゴンが、国王の娘をさらいます。騎士が国王の娘を助けます。助けられたお姫様と騎士は結婚します。めでたし、めでたし」
お姫様と騎士がライゲンの中心で結婚式の踊りをします。それがとても愛らしく微笑ましかったです。
その後、2つのグループに分かれて、朝食が始まりました。私たちは三人でキッチンに入って、朝食を頂きました。園児のお母さんが作ったジャムが美味しくて、またハーブ入り塩こしょうもバターにふりかけると粉チーズのような味がして美味でした。「Kräutersalz mit Meersalz」という名前で、DMに売っていると教えてもらったので、早速その日に購入しました。
園長先生が作ったシュタイナー人形です。なんと愛らしい、、、。
朝食後、10時半から外で自由遊びが始まりました。私はお客様をお連れして、1歳〜3歳の子供のお部屋を一人でご案内しました。いや〜、何度か足を運んだ甲斐があります。
前園長先生がいないのが少し寂しくて、でも懐かしいお部屋でもあり、なんとも不思議な気分になりました。
遊ぶお部屋やトイレ(トイレにはオムツ替え台)、お昼寝をするお部屋をご案内して、その後は、3歳〜5歳の2クラスの教室もご案内しました。
そして、園庭で自由遊びを見学。11時半にまたお部屋に戻り、「終わりの会」を見学しました。
終わりの会では、園長先生がお話をします。まずは、ロウソクに灯をともして、大天使聖ミカエルのお話をされました。内容は、、、
「悪いドラゴンに苦しめられている民。そこに騎士がやってきます。騎士は大天使聖ミカエルの夢のお告げでドラゴン退治を命じられます。そして、老人がドラゴン退治に必要な刀の存在を伝えます。ミカエルはその刀で無事にドラゴンをやっつけて、村には平和が戻りましたとさ。めでたし、めでたし」
この先生のお話を聞く前に、先生がまず子供たちの手をラベンダーオイルで濡らし、あったかい蜜ロウでできた玉を手渡し、子供たちはお話を聞きながら、玉をこねて自分の好きな形を作っていきます。私はハートの形を作りました。
お話の後、作品をライゲンの中央に設置された丸い木のわくの上に置きます。そして、石の天秤がきました。
片側に大きな石、もう片側に小さいな石がたくさん置かれています。
先生は子供たちに問いかけます。「今日どんないいことをしましたか?」
一人の子供は言います。「ぼくは○○君の服をかけてあげたよ」
先生は言います。「あなたに光がともるでしょう」
他の子供たちも次々に手伝った事を発表していきます。先生は最後に「朝食を手伝った子供たちにも光がともるでしょう」
そして、最後に先生はこう言いました。「今日もまたみんな良いことをしましたね。良いことをしたことを示す石をこの天秤に入れましょう」
そして、園児が一人、小石を一つ、天秤に入れました。
12時までの視察でしたので、私はお客様からの質問を保育の合間を見て、園長先生に尋ねてみました。
「先生がシュタイナー幼稚園で働き続けるためのポリシー、あるいは動機づけはなんですか?」
先生の答えは、「子供が公正や正義(Gerechtigkeit)を学べる最高の場所だから、私はこの園で仕事をしています」
また、「3歳児が入園したいとなったとき、大人数のクラスと少人数のクラスとどのような決定で振り分けられるのですか?」という質問には、、
「通常、3歳児は少人数クラスに振り分けられます。しかし、兄弟姉妹がいるという理由で、大人数の同じクラスに入ることもあります。また、子供によっては、少人数の方が落ち着くという人もいれば、大人数の方がにぎやかで楽しいと思う人もいるので、保護者と子供の人格について聞き出して、最終的には幼稚園がどのクラスに振り分ければよいのか判断して決定します」
外で自由遊びを見学していたときに、園長先生が非常に興味深いお話を私にしてくださいました!
「私たちは、呼吸するような保育を心がけています。つまり、息を吸って、息を吐く。集まっているとき、息を吸っている状態で、自由遊びをしているときは、息を吐いている状態です」
私はこの言葉を聞いたとき、頭の中でハレーションのようにヒラメキがありました!
そうです。「息を吸っている状態」は「誘導保育」で、「息を吐いている状態」は「見守り保育」なのです。「緊張」と「解放」を繰り返すことが、幼児教育には重要ということなんだと思います。
今回、新しい園長先生とお話できたことは非常に参考になりました。お客様からのご質問のおかげです。感謝です!
11月にまたシュタイナー幼稚園を訪れます。今からとっても楽しみです♫