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森ようツナギスト Japanication ゲッベルみどり

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【連載コラム】モンテッソーリ教育と結びつく「ウンターメンチング森の幼稚園」

森のようちえん全国ネットワークさんでの連載コラム第二弾です!




ドイツ森よう便り「インスパイア」







モンテッソーリ教育と結びつく「ウンターメンチング森の幼稚園」

森ようツナギスト ゲッベルみどり


前回は、私が企画プロデュースしている『森の幼稚園インターンシッププログラム』に参加された日本人実習生第一期生が、現在正規スタッフとして勤務されている、「ガウティング森の幼稚園」をご紹介しました。 このことは、優秀な日本人の幼稚園の先生が、ドイツの森の幼稚園に認められたことを立証しています。情熱にあふれ志が高い日本人女性をドイツの森の幼稚園に実習生として派遣する仕事は、私の誇りであり、意義を感じています。今後も皆さまの夢のお手伝いをさせて頂ければ嬉しく思います。

ドイツ全国では現在、700以上の森の幼稚園が存在すると言われています。統計によりますと、ドイツ全国の幼稚園数は、2002年は27200。2011年現在は、35000くらいではないかと想像しています。 そのため、森の幼稚園の認知度は、ドイツ全国ではそれほど高くありません。むしろ、シュタイナーやモンテッソーリの方が、皆さんに知られているという感じです。

ドイツの森の幼稚園は、一般的に親主導で運営しているNPOになります。ある一定の条件を満たせば、自治体から補助金の恩恵を受けて認可型森の幼稚園に生まれ変わります。1993年にフレンスブルクでドイツで初めて国から認可を受けた森の幼稚園が誕生しました。

今回ご紹介させて頂く、「ウンターメンチング森の幼稚園」の母体は親主体のNPOで、正式名称は「Waldleben e.V.(非営利団体「森の生活」)」。 ミュンヘン市から認可されている森の幼稚園です。日本のように「自主保育型森の幼稚園」が前身だった森の幼稚園もドイツには存在します。例えば、村には他に幼稚園がなくて、先生が森のプレイグループとして、週に数回の保育を始めたところ、毎日保育を行う森の幼稚園に発展していったというケースです。日本との違いの一つとして、ドイツでは保護者が教育者の資格を持つ先生を採用しますので、母親が常時先生の代行もするという自主保育型はないと考えた方がよいでしょう(ただし、ドイツでも先生が病気や怪我や休暇などの理由で不在のときは、保護者が代行する場合があります)。
                               
第二期生が実習した「ウンターメンチング森の幼稚園」の活動場所は、ミュンヘンの北西部にある森「アンガーローエ」。バウバーゲン(コンテナタイプの園舎)は住宅地の中にあります。子供たちはトロッコを引っ張って、毎日森に出かけます。バウバーゲンから森までの距離は片道、幼稚園児の足で20分030分くらいです。

アンガーローエは、森の幼稚園には大変人気のスポットで、森の中では必ずと言ってよいほど、他の森の幼稚園の園児たちに遭遇します。私が興味深いと思っているのは、住宅地に隣接している場所なのに、森に一歩足を踏み入れるだけで、まるで見えない壁に覆われたかのように自然の優美さと静寂さを体感できることです。だからこそ、子供たちは毎日森に行きたいと思うのかもしれません。

NPO「森の生活」は、2歳児のための保育園も運営していて、スタッフの合計数は5名(幼稚園担当の先生が2名、保育園担当の先生が2名、実習生が1名というスタイル)。ただし、第二期生がいたときは実習生が2名いました。園児数は18名。斬新と思ったのは、モンテッソーリ教育者の資格を持つ幼稚園教諭がいるので、バウバーゲンの中には至るところにモンテッソーリ教具が置かれていることです。例えば、円柱と秤のセット、つむぎ棒、文字の箱、はめこみ図形など。数、言葉、運動能力を高めるために取り入れられているそうです。嵐のときは、森に立ち入ることは危険なので、子供たちは一日中バウバーゲンの中で過ごすことがあります。そんな日は、これらのモンテッソーリ教具が大活躍して、子供たちは遊びながら勉強するそうです。

森の幼稚園は、「森」にとらわれることなく、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育など、良いと思ったものを取り入れられるという利点があるということになりますね!それがまた森の幼稚園の魅力ですね。

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今回の写真は、子供たちが横たわっている幹の上で行進しているところです。幹がお芝居のステージで、子供たちは歌いながらお芝居の一幕を演じています。そんな即興劇をするためには、お友達の協力が必要不可欠であり、子供たちは提案したり妥協したり討論したりしながら、チームワークを学ぶのだと思います。
最後に、ウンターメンチング森の幼稚園のコンセプトの抜粋をご案内します。

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自由と境界線
境界線は人生の一部です。コミュニティの中では、たくさんの自由が許されています。しかし、正確で明確にコミュニケーションしなければならない境界線が存在します。制限には痛みを伴います。ですが、拒否を意味しているわけではありません。保育者は、首尾一貫した愛情を注いで制限が守られるようにしなければなりません。決定的に重要なことは、保育者は反抗する子供たちにとって、彼らを受け入れられる人物であり続けることです。教育と子供たちの成長を見守ることは、子供たちが失望なく大人になることを可能にしてあげるという意味ではありません。また、子供たちが泣かないように教育することが目的になってもいけません。境界線は子供が痛みやフラストレーションや失望を我慢することを学ぶためのチャンスでもあるのです。子供たちは、私たちの社会や文化に存在する制限を学ぶと同時に、成長して発見して自分の力を外に示す能力を高めなければなりません。境界線があるからこそ見通しが利く環境は、子供たちに自由に動くために最低限必要な勇気を与えます。
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私はこの「自由と境界線」こそが、森の幼稚園の保育者が子供たちに教えるべき最重要な教育理念なのではないかと思っています。境界線の存在があるからこそ、人は真の自由を獲得できるのだと思うからです。
今回のコラムはいかがでしたでしょうか。ご意見やご感想等を頂けましたら、とても嬉しく思います(メールアドレスはmidori@japanication.de)。

注意: 掲載されている写真の著作権はJapanication Midori Goebbelに帰属します。


by midorimartin | 2011-11-18 20:10 | コラム