6月25日と26日、Jenaで行われたドイツ自然と森の幼稚園全国連盟総会に参加しました。
前日の6月24日にICEで4時間かけてJenaに到着したのが19時前。
今回2月にお世話になった長野の森の幼稚園「こどもの森ようちえん」の創立者で、日本の森のようちえん全国ネットワーク運営委員長の内田幸一氏とご家族がこの総会に来られることを知り、急遽アレンジしたベルリン在住の通訳Tさんに約15年ぶりに再会。
(Tさんは非常に優秀な通訳さんなので本当に安心してご紹介できました!)
二人でまずはビールで乾杯しました☆
総会初日。朝8時頃、Tさんと一緒に朝食。前日は眠れず。2月の出張のときもそうだったのでまたかといった感じ。
10時30分 オープニング
会長からご挨拶があり、年間の木協会の人(Baum des Jahres)が、
「ドイツ森の幼稚園は少なすぎる。子供は自然を必要とし、自然は子供を必要としている」とコメント。ちなみに2011年の木はElsbeere。
11時 レクチャー「身体が知っていることを頭で学ぶ」講師はアンサリ氏。
化学者なのに、自然科学と自然体験は違うと力説されました。つまり、自然体験は自然科学よりも大切ということ。20年かけて「自分はできる」とわかったと発言されたのが非常に興味深かったです。
実験は自然を巧妙に操作するものであり、自然研究に直面することには意味がある。
子供たちは暗示的な知識を身につけていて、発見する能力を持っている。
子供たちは社会的な関わりが必要であり、説明は二の次なのである。
子供達にどのように目に見えない知識を与えればいいのか?
幼稚園の子供には質問だけをさせればいい。
答えを導く必要はない。子供に考える力をつけるためのプロセスが大切。
説明してもらって理解するまでに子供は時間がかかる。
子供に自発的に答えを導き出させること。
カモメがなぜ浮くのかの話のときに、頭の中にあるコンセプトが修正されなければならないのに、それが行われないまま、大人になってしまい、大人も子供とまったく同じ回答をするということがわかり非常におもしろいと思いました。
水槽を使って実験もされました。どの野菜と果物が浮くのかがテーマであり、キュウリ、スイカ、ピーマン、メロンは浮いて、チェリー、ぶどう、ニンジンは浮きませんでした。トマトは種類によって浮くものと浮かないものがあるそうです。
浮力や抵抗、そして野菜や果物の構造が関わっているとのことで、家でも実験してみたいと思っています。
12時30分 昼食
13時30分 レクチャー「森の幼稚園での持続的成長型教育 」講師はコーラー氏。
持続性には何が隠されているのか?
研究的な持続性
持続性を持つ資源
持続的成長とは
●公平、正義
●ネットワーク(エコロジー、ソーシャル、エコノミー)
●参加、共同
森の幼稚園
●創造性と想像性
●自然体験
●生活空間及び生活基盤としての自然の知識
●社会的及び独自の競争能力
●学ぶ喜び
●意味のある体験
●動的な体験
●総合的な言語支援
質疑応答の時間に森の幼稚園を実際に訪問したことがあるのかとブーイングが起きました。
私も彼女の話を聞きながら、持続的成長型教育が森の幼稚園に突然くっついた感じがして違和感を感じていたので、森の幼稚園の教育者たちにとっては恐らく机上の話であり現実味がなかったのだと想像しています。
15時〜17時 ワークショップ
5つのワークショップにあらかじめ第一希望と第二希望を参加者は提出することになっていました。
私は内田先生の奥様とお嬢様と一緒に木の作品作りのワークショップに参加しました。
ナイフの素材や鋼の説明があったのですが、わからない専門用語もありイマジネーションを働かせながら訳していました。
私は木のスプーン、奥様は木の鳥、お嬢様は木の豚を作成。三人で世間話をしながら制作できたので私的にはとっても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
17時からメッセ。内田先生の森の幼稚園の模様も写真と動画で紹介されていました。
自作の森の幼稚園の歌を歌っている人がいたのでCDを購入しました。
私は韓国人の子供の遊びにも参加しました。お手玉のルールに近い遊びがあり集中してプレイし続けたところ、そのゲームをプレゼントとして頂きました。韓国人のみなさん、ありがとうございました!
18時30分 夕食
20時から メルヘンの時間。仙人のような出で立ちの男性がいろんな楽器を使いながら海外のメルヘンや民話を紹介されました。話のオチがすべてわからなかったのが残念でした。
21時30分過ぎにコウモリ探しの探検に参加しました。水コウモリや渡りコウモリなど全世界には2000種類以上のこうもりが存在するとのこと。そのうち、3種類は血を吸うコウモリだとか。コウモリは秋から春にかけて半年ほど冬眠する哺乳類だそうで、子供のコウモリは早いうちに巣離れをしなければならないそうです。野生の世界は厳しいですね。
森を抜けて湖のそばでエコー装置を使いながらコウモリの捕獲をコウモリ博士の先生がトライされたのですが残念ながらうまくいきませんでした。その代わりに美しいホタルが見れたことと三人でおしゃべりしながら参加できたことが私的には楽しかったです。
24時近くに宿に戻り、内田先生ご家族とビールで乾杯させて頂きました。
6月26日、またもやまったく眠れずで、7時に内田先生ご家族と朝食。
8時30分 レクチャー「自然の教育が一番」 講師はクリングスアイス氏。
テーマ
1.Grasmuecke(学名Sylviaで、日本語では「ズグロムシクイ(頭黒虫喰)」)とは何か?
2.エルンスト・ヘッケルとフリードリッヒ・シラー
3.現実的な共同構成主義
ビオスカウティングとは何か?
●知覚は脳の発見
それぞれの脳は個性的に働く
●多様性 たくさんあるほどたくさん詰められる
●三次元性
●自己効力が最重要
●強いネットワーク 幼稚園と学校
持続的成長型教育
●子供は研究者
●自然あるいは森の中の子供達
●自然学の仲介
ベストは0歳から14歳まで一つの教育施設で過ごすことだそうです。
教育学的な取引き
子供からは、 モチベーションはどこか?
大人からは、 テーマはどこか? 可能な限りいつも感激を利用すること
最高の教育は可能な限り自然の教育
●人間は自然の生き物だから
●自然の運動
●自然の社会的態度
●自然の共同社会 生物哲学的議題 人間は動物や植物と関わることを好む
私たちは緊急に確実な境界線を知る体験が必要
●私は何ができるのか?
●私は何ができないのか?
●私は何をしてもよいのか?
●私は何をしてはいけないのか?
●生と死
●未来と過去
●静けさと騒がしさ
●食べることと食べられること
自然の中にレッツゴー!
人間の歴史的なチャンスは今来たのだ。自然と共存しよう!
自然は直感の源
持続的成長と未来の能力
注意深い野生化
スロー性の再発見
退屈は想像性の源
10時 レクチャー「韓国の森の幼稚園 」 講師はチャン氏。
韓国は行政支援が非常に整っていて、例えば、森の幼稚園のイベントのテレビ宣伝が一週間毎日なされました。お手本の森の幼稚園の創立にチャンさんは協力され、韓国政府から教育への貢献が称えられ賞を受賞されました。映像をふんだんに使ったわかりやすいレクチャーでした。
10時30分 「日本の森の幼稚園 」 講師は内田氏。
1983年26歳で来独され、30年ぶりにドイツに来られました。
今年、全国ネットワークで全国調査をする予定だそうです。
日本の森の幼稚園は無認可で小規模が多い。
自主保育型(共同保育含む)と主催者型保育に大別。
毎日でないところが多く、1歳半〜3歳、3歳〜5歳に別れる。
20名グループで、保育者は3名でお母さん1名とか。
毎日の保育で、1ヶ月 2万円〜3万円。
無認可は援助金なし。
保護者からの期待
●自然との関わりから積極性が育つ
●体力向上
●五感を活用して知覚が育つ
●コミュニケーション豊か
森のようちえん全国ネットワーク
2008年発足。小さい幼稚園が集まった団体。
ウェブサイトを通じて情報提供されている。
森の幼稚園講師養成講座あり。
毎年秋に開かれるフォーラムには、500名以上の参加者が来られるそうです。
●保育資源の活用
その地域にある文化や歴史
動植物
季節の変化
自然の中で好奇心を育てること!
●父母との交流も大切
父母と共感できる喜び
年齢違った者同士で育つのも大切
●地域の保育資源を有効活用することが先生の役割
保育者は見守りながら子供と関わりを持つ
保護者は共感を持って子供と関わりを持つ
12時過ぎに内田先生ご家族が出発することになったため、
私はこの日のワークショップに参加せず。
内田先生ご家族をお見送りした後、13時頃会場を跡にしました。
その後、通訳のTさんと駅前で昼食。15時頃、ミュンヘンに向けてICEで出発しました。
こうやって私の初めての総会は終了しました。以下、感想です。
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私がこの総会で感じたことは、久々に自分の無力感。
通訳は得意でないことをあらかじめ伝えてあったので、オーガナイズだけすればよかったのだけれども、内田先生の奥様とお嬢様のために通訳する機会が何度かあり、そのたびに全部訳せない自分が情けなく、役立たず感が強く残りました。
より進み多種多様な森の幼稚園が存在するドイツ。
行政の助けを借りて森の幼稚園の大々的な宣伝も行える韓国。
自主保育や共同保育が主導で動き、地域の環境に合わせて森の幼稚園が発展していかなければならない日本。
まったく違うスタイルで動く三国がいったいどのように協力しあっていくのか大注目である。
そして、私ができることは何なのだろうかと模索しています。
レクチャーの内容にも有りましたが、自分の境界線を見つける体験ができたのではないかと思っています。
プロの通訳さんの仕事を間近に見て思ったことは「プロは一日にしてならず」。
才能はもちろん必要だけど、努力が必要なこともわかりました。
本日、夫と話をしたところ、「専門用語はわからなくて当たり前」と言ってもらい、ほっとする私がいました。今回は何もかも初めてだったし、右も左もわからない部分が多かったのですが、次はもっとしっかり参加したいです。
来年はバイエルン州連盟の総会に参加したいと思っています。できれば、日本の総会にも来年は参加したいです。
そして、ドイツと日本の森の幼稚園のこともっともっと勉強して、ドイツ語の語彙力も高めていきたいと思っています。